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小屋たちが語る、静かな世界——『こやたちのひとりごと』

小屋たちが語る、静かな世界——『こやたちのひとりごと』

日本の詩壇を代表する谷川俊太郎と、風景を切り取る写真家・中里和人が手を組み、静かに佇む小屋たちの「ひとりごと」を紡ぎ出した一冊、『こやたちのひとりごと』。この絵本は、ただの建物の写真集ではない。そこにあるのは、時を経た小屋たちが持つ独自の存在感と、彼らが語るかのような言葉の世界だ。

小屋たちのささやき

山里や海岸にひっそりと佇む小屋たち。それぞれが異なる歴史を持ち、異なる風景の中で生きている。そんな小屋たちが、「ぼくはひとりでぽつんとたってるのがすき」「からっぽじゃないよ」と語りかける。まるで彼らが生きているかのような錯覚を覚えるほど、言葉と写真が絶妙に絡み合う。

谷川俊太郎の言葉、中里和人の視点

谷川俊太郎の詩的な言葉は、小屋たちの無言の存在を際立たせる。彼の言葉は、読者の心に静かに響き、小屋たちの世界へと誘う。一方、中里和人の写真は、まるで肖像画のように小屋たちの個性を映し出す。彼のレンズを通して見ると、小屋はただの建物ではなく、時間を刻む生き物のように感じられる。

すべてのものに宿る命

この絵本を読んだ後、街を歩くときにふと目に入る小さな建物が気になり始めるかもしれない。小屋たちの静かな語りに耳を傾けることで、私たちは普段見過ごしているものの美しさに気づく。すべてのものに命が宿っている——そんな感覚を、子どもたちにも楽しんでほしい。

『こやたちのひとりごと』は、ただ読むだけでなく、感じる絵本。静かな世界に身を委ね、小屋たちのひとりごとに耳を傾けてみてはいかがだろうか。


かわいい小さな歌の声

本の情報 ISBN 9784752010678 著者 谷川俊太郎 文中 里和人 写真 文中里和人 出版社 アリス館 出版年月 2023年06月 サイズ 〔40P〕30cm 分類 児童≫創作絵本[日本の絵本] 登録日 2023/06/10